瀧本哲史著 『ミライの授業』

- 作者: 瀧本哲史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/07/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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購入前、アマゾンのレビューで抜群だったのですぐさま入手。そして、手にしてからあっという間に読めてしまった。
14歳に向けて書いてある本だが、大人でも十分面白い。いや、大人にとって大変大きな意味があると確信した。
【目次】
誰もが知っている偉人を誰も知らない切り口で紹介
様々な歴史上の偉人について書かれているが、その切り口は世間一般に知られている側面とは全く違う。
え?そうなの???
と、口が空いたまま読み進めてしまうのだ。
例えば、ナイチンゲール。
一般的に知られているのは、戦場での天使のような看護婦、というイメージだろう。私自身の認識も、それ以上でもそれ以下でもなかった。
しかしここでは、全く違うナイチンゲールの、卓越した行動力と知性と功績が語られている。彼女の大きな功績は戦場での看護そのものよりも、戦場の兵士達の最も多い死因が銃弾や砲撃による戦闘死ではなく、劣悪な環境での感染症によることを数学や統計学によって証明し、戦場の真実を暴いたことだった。
そして、まだ棒グラフや円グラフさえも普及していなかった時代に、彼女は独自の「コウモリの翼」というグラフを考案し、世に示していく。
なんと、統計学の先駆者でもあるナイチンゲール。ここでも紹介されている
↓↓↓
www.stat.go.jp
それにしてもすごい。
その行動力たるや・・・!
「古びた昔話」のようにしか捉えていなかった自分が恥ずかしくなった。
人間が陥る「思い込み」の罠を偉人で解説
フランシス・ベーコンの「4つの思い込み」
●種族のイドラ
人間のからだや脳の仕組みからくる「人間の思い込み」
●洞窟のイドラ
自分の考えは全て正しいと勘違いしてしまう「個人の思い込み」
●市場のイドラ
まわりの評判や噂話を鵜呑みにしてしまう「言葉の思い込み」
●劇場のイドラ
偉い人や有名な人のいうことを信じてしまう「権威の思い込み」
森鴎外の「権威の思い込み」
明治から昭和の初期、結核と並んで日本人の2大国民病と言われた「脚気」。その原因に当時、二つの説が上がっていた。
一つは、海軍軍医、高木兼寛による「栄養不足説」。
もう一つが陸軍軍医、森鴎外による「伝染病説」。
「栄養不足説」の海軍はパンや麦飯の支給により目覚ましい効果を上げたにもかかわらず、森鴎外ら陸軍軍医は「食事など関係ない!」と自説を曲げなかった。その結果、日清戦争では脚気による死者は240人。日露戦争では28,000人にのぼったのだとか。
筆者は「森鴎外は『権威の思い込み』にとらわれた典型的な人でした・・・彼はあまりにも優秀だったせいで、ドイツ医学という権威や常識の枠内でしか物事を判断できなかったのです。医学の常識を『疑う』ことができなかったのです」と指摘し、
「高木はのちに『日本疫学の父』と称えられ、海外でもその功績が高く評価され・・・・そして、頑固な医学者・森鴎外が医学の道ではほとんど功績を残せないまま、文学者として記憶される人物になりました」と締めくくる。
この両者のその後の明暗。
し、知りませんでした・・・・。
筆者はこのエピソードを紹介することにって読み手である14歳のこどもたちに権威や常識を疑うこと、事実をベースに物事を考えることの重要性を説いている。
このことは子どもだけでなく、我々大人にも十分大事なことではないか。いや、自分のやり方や価値観に凝り固まってしまっている大人にこそ、こういう学びは必要なのだ。
私自身、4つのイドラすべてに心当たりがありまくりだ。
それは私自身を狭めている。
叶うことなら、思い込みから自由になり、柔軟な感性を手に入れたいものだ。