複数の仕事や作業を同時にこなしている人を見ると「有能そう」「かっこいい」と羨ましくなる。
しかし「同時並行」、実ははさほど効率的ではないらしい。
【目次】
脳はマルチタスキングが苦手

- 作者: マデリン・ヴァンヘック,ケン・パラー,リサ・キャラハン,ブラッド・コラー,茂木健一郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2010/09/16
- メディア: 単行本
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脳化学者の茂木健一郎さんはこの書物で、
▶︎「多くの人が、自分には同時にマルチタスキングの才能があると信じている。彼らはその能力を誇らしく思い、その助けによって仕事を仕上げる。そして、同じようなスキルを持つスタッフを高く買っている。・・・ジョン・メディナがいうように、同時に二つ以上のことに関心を向けるという意味でのマルチタスキングは神話である。」
▶︎「マルチタスキングというのは、賞賛されるべき「スキル」のように思われがちだが、実は生産性に大きな打撃を与えかねない「タイムロス」なのである。」
と指摘している。
同時並行はタイムロス!
昔、上司から「仕事はいくつものことを並行して行うものよ」と叱責されたことがあった。一つ取り組んでから次に取り掛かっているわたしのやり方を愚直に思われたのだろう。
その時は「なるほど、そういうものか。そうならないといけないんだな。」 と素直に受け入れつつ、自分をみっともなく感じた。
しかし茂木さんは、先述のデビット・メイヤー博士の調査を通して次のように記している。
▶︎「注意をあちこちに移動させなければならない場合、作業を仕上げるにはずっと長い時間がかかる。作業に突然の中断が入る場合、若い人でも年長者と同じくらい、作業の速度が落ちたという。」
なんと!かえって仕事のスピードは落ちるんじゃないか!
あの上司の言葉を聞いて以降、私は同時並行・同時処理・マルチタスクを「高度で、そうありたいもの」と位置付けていた。非効率的だなんて、1ミリだって疑ったことはなかった。まさに青天の霹靂であった。
現代生活はマルチタスキングにあふれている
今の生活は常にマルチタスキングだ。「使いこなしている」と自負している人も少なくないだろう。実際、傍目にはそういった姿は実にスマートに見える。
しかし、スマートで、能率的だと思い込んでいるその同時並行作業は、実は一つ一つ集中して取り組んでいる人よりもクオリティの低い仕事になってしまっているのだ。
あのときのわたしのやり方は決して劣っていたわけではないのだなあ、と今になって思う。愚直でカッコ悪く見えようが、結果的には時間を浪費せずに質の高い仕事ができていたのかもしれない。
だから、
「スマートに、かっこよくやれていない」と気にする必要はない。
効率化の工夫は他にも必要かもしれないが、集中して一つのことをやる姿勢は実はスマートなのだから。